公証役場での公正証書遺言作成時、どんなことを聞かれるの?

遺言を作成する場合いくつかの方法がありますが、その中でも紛失や改ざんのリスクがないなど、確実性において最も有利なのが「公正証書遺言」といわれる方式での遺言になります。

本ブログでは、公正証書遺言作成のスタートラインから、公証役場で公証人にどういったことを聞かれるのかなど、当日の流れを含めてかんたんに紹介していきます。
※公証役場によって若干流れや内容が変わってくる場合がありますが概ねこのような感じと思ってご参考になさってください。

  • 公証役場も、普段はあまり接点がなく「どういうところだろう?」と思われる方も多いと思います。公証役場とは、法務大臣から任命された公証人が1名以上配置されている法務省・法務局所管の公的機関です。公正証書の作成(公正証書遺言や権利義務関係の各種契約書類など)、私文書や会社定款の認証、確定日付の付与等を行っており、全国に約300ヶ所あります。

専門家と打ち合わせをして、公正証書遺言の内容を確定するまでの流れ

今回は、専門家(以降、司法書士に置き換えます)と打ち合わせをしながら公正証書遺言を作成する場合の流れをかんたんに紹介いたします。

  1. まず最初に、司法書士が遺言者から残したい遺言の内容を聞き、それに基づいて民法の規定に沿った遺言書の案を作成します。
  2. この案の内容でOKとなったら、次に、この案を司法書士が公証役場へ送り、公証役場で一度確認をしてもらいます。
  3. 公証役場から、チェック済みの公正証書遺言の案をもらいます。修正が必要な時はそれに修正を加え、この内容で確定となったら、いよいよ公証役場で公正証書遺言書を作成してもらうこととなります。(公証役場での当日の流れは後述)。

民法第969条には、公正証書によって遺言をする場合の方式についての記載があり、大まかな内容は次のとおりです。

  1. 証人2人以上の立ち合いがあること。
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口で伝える(「口授」といいます)こと。
  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、筆記した内容を遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させること。
  4. 遺言者および証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印すること。
  5. 公証人が、その証書は正しい方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名・押印すること。

当日、公証役場での遺言書作成の流れ

次に、実際の公証役場では、どんな感じで遺言書の作成が進められるのかを見ていきたいと思います。

  1. いきなり公証役場に行っても遺言書を作成することはできないので、司法書士から事前に予約をしておきます。予約した日時に公証役場へ行き、公証人の前に遺言者および証人が座り、公正証書遺言の作成がスタートします。慣れない場面という多少の緊張感が最初はありますが、公証人も「どうぞリラックスしてください」といったような声かけをしてくれる場合もあり、どちらかと言えばやわらかな雰囲気で進められます。
  2. 全員着席してまず最初に、遺言者に対して氏名や生年月日の質問がなされ、印鑑証明書などの本人確認書類の提出がなされます。証人2名に対しても身分証明書の提示などの本人確認が行われます。その際、遺言者は用紙に氏名や生年月日の記載を求められ、持参した実印の印影の確認などもされます。
  3. 次に、遺言の大まかな内容についての質問が公証人から遺言者に対してなされます。
    特に、それぞれの財産を誰に相続させたいか、相続させたい者との親族関係については注意深く質問がなされ、用紙に記入を求められたりもします。個人的な実務上の感想であり、全部に当てはまる訳ではありませんが、遺言者への質問の中には、遺言者が公証人に対して訂正をすべき事項が含まれる内容も稀にある印象です。そのような質問をすることで、遺言の内容についての記憶を確認し、より正確性を高めようとしているのかなと私は思っています。
  4. 大まかな内容の確認が終わると、遺言書全文の読み合わせが行われ、内容に間違いがない旨の確認ののち、遺言書の原本に遺言者、証人がそれぞれ署名し、押印をします。ここに押す印鑑は、遺言者が実印、証人が認印となります。
  5. 最後に、公正証書遺言の正本や謄本を受け取り、公証人へ費用の支払いをして終了となります。
  • 遺言の内容の量にもよりますが、時間にすると約30分くらいかかります。

質問される事項のまとめ

  • 遺言者ご自身の氏名や生年月日(口述と記述)
  • それぞれの財産を誰に相続させたいのか(その者の氏名と親族関係の口述)
  • 【稀にあるかも?】訂正すべき事項が含まれる質問をされたとき、ちゃんと訂正できるかの確認

財産をこうしたい。遺言に残すことで実現できる可能性が高まります。

もしも、ご自身の財産について以下のような思いがひとつでもあるようでしたら公正証書遺言の作成を強くおすすめいたします。

  • 法律で定められた配分ではなく「こうしたい」という明確な意思がある
  • 残された親族間で争いになってほしくない
  • スムーズに相続が進んでほしい

また、遺言書には、付言を付け加えることができます。付言とは、遺言書の最後に自由な文言が残せる末尾の追記になります。例えばこの付言を用いて、この遺言を残した理由や意図を述べたり、親族への感謝の気持ちを添える、といったケースです。亡くなったあとに思いを伝えることができることは、遺言書の持つ大きな要素だと実務で携わっている中で実感しています。

かんたんではありましたが、公正証書遺言作成から当日のシーンまで紹介いたしました。これらは明確な意思表示や判断ができるうちでないと、今回ご紹介したような公証人への口述(記述)も対応できず、公正証書遺言を残せなくなってしまう可能性もあります。

相続対策は何ごとも「思い立ったが吉日」です。スムーズな相続対策のためにも、お悩みの方はぜひ一度、お気軽に専門家をお訪ねください。