「法定相続情報一覧図の写しの交付の申出」の後、戻ってくる書類、戻ってこない書類

平成29年5月29日より、法務局で「法定相続情報一覧図」の写し(法務局で認証を受けた家系図のようなものです)の交付を受けられるようになりました。

通常、不動産登記や預貯金の相続手続きの際には、法定相続人の範囲を確認するため、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍や、相続人の戸籍などの書類一式を提出して行う必要があります。

こういった書類の多さや手続きの煩雑さにより、不動産を処分する必要がないなどの場合には、相続登記が後回しとなり、何年も放置されてしまう原因の一つにもなっています。

「法定相続情報一覧図」があれば、相続のあらゆる場面で便利!

 この制度の開始以降は、被相続人・相続人の戸籍、除籍を集める必要は従前と同様にあるものの、それらの戸籍一式を法定相続情報一覧図と共に法務局に提出し、登記官による戸籍の確認のあと、法定相続情報一覧図の写しの交付を受けることができるようになり、交付を受けた法定相続情報一覧図の写しを法務局や金融機関に提出するこで、戸籍・除籍謄本の束をその都度提出しなくても相続手続きが行えるようになりました。

 その後、制度の改正も行われ、現在では不動産登記、預貯金の払戻し、相続税申告のほか、年金手続きなどにも利用することができるようになりました。

 また、この法定相続情報一覧図の写しの交付は、何通とっても無料であるため、必要となる通数分を最初に取っておけば、様々な手続きを同時進行できるため、非常に便利な証明書であると言えます。

提出した書類の返却を受けるには、申し出時に注意が必要です

さて、この便利な「法定相続情報一覧図」ですが、交付の申出をする際に気を付けないと、苦労して取得した書類の一部が法務局から戻ってこないことになってしまいます。

まず、法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をする際は、申出人の本人確認をするため、申出人の氏名、住所が記載された市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書を添付書面として提出する必要があります。通常、住民票の写し、運転免許証等の写しなどがこれにあたります。(不動産登記規則第247条第3項第6号参照)

そして、登記官による戸籍の確認が終わり、法定相続情報一覧図の写しの交付がされると、以下の書類が、不動産登記規則第247条第6項の規定により返却されます。

例えば、以下の書類が返却される書類となります。

  1. 被相続人の出生から死亡までの除籍謄本(不動産登記規則第247条第3項第2号)
  2. 被相続人の最後の住所を証する書面(不動産登記規則第247条第3項第3号)
  3. 相続人の戸籍謄本(不動産登記規則第247条第3項第4号)
  4. 相続人の住所も法定相続情報一覧図に記載した場合の、相続人の住所を証する書面(不動産登記規則第247条第4項)

相続人の住所も法定相続情報一覧図に記載しようとすると、相続人の住所を証する書面(通常は「住民票の写し」をつけることが多いです)を添付します。

仮にAさん、Bさん、Cさんと三人の相続人がいた場合、3人の住民票の写しを添付することになります。

また、今回の法定相続情報一覧図の写しの交付の「申出」をするのが、Aさんだったとすると、Aさんは「申出人の本人確認のための住民票の写し」も添付する必要が出てきます。

  • しかし、「相続人の住所を証する住民票の写し」と「申出人の本人確認のための住民票の写し」は、兼用することができるため、1通提出すれば法定相続情報一覧図の写しの交付を受けることができます。

「住民票の写し」を戻してもらうなどの手続きを失念した場合

 もし、「住民票の写し」を戻してもらうなどの手続きを取らずに申出を行ってしまうと、手続の完了後、Aさんの「住民票の写し」だけが法務局に保管され、戻ってこないことになってしまいます。

これは、上記(4)の「相続人の住所を証する書面としての住民票の写し」は、何もしなくても戻ってくるのですが、「申出人の本人確認として添付した住民票の写し」は、不動産登記規則第247条第6項に書かれた上記(1)~(4)の「返却される書類」のどれにもあたらないため、法務局に保管されてしまうことになるからです。

これとは反対に、「Bさん、Cさんの住民票の写し」は手続きをせずとも戻ってきます。

Aさんの住民票の写しも戻してもらうには、「住民票の写し」のコピーをつけて戻してもらう手続きをする必要があります。

司法書士が代理で交付の申し出をいたします!

相続手続きの際、「法定相続情報一覧図」があると大変便利ですので、基本的には取得することをおすすめいたしております。とはいえ、ご自身で交付の申し出をするには戸籍収集の面倒さがあることに変わりなく、また、上記のとおり、戻ってくると思っていた書類が戻ってこない、といった場面も出てくる可能性があります。

手続きが面倒、時間をかけたくない、自分で行うのは心配だ、という場合、ぜひお近くの司法書士事務所へご相談ください。当事務所でも業務として取り扱っております。お気軽にご相談くださいませ。

不動産登記規則第247条

第六章 法定相続情報

(法定相続情報一覧図)

第二百四十七条 表題部所有者、登記名義人又はその他の者について相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、その相続人(第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る。以下本条において同じ。)又は当該相続人の地位を相続により承継した者は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対し、法定相続情報(次の各号に掲げる情報をいう。以下同じ。)を記載した書面(以下「法定相続情報一覧図」という。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をすることができる。

(省略)

 前項の申出書には、申出人又はその代理人が記名押印するとともに、次に掲げる書面を添付しなければならない。

 法定相続情報一覧図(第一項各号に掲げる情報及び作成の年月日を記載し、申出人が記名するとともに、その作成をした申出人又はその代理人が署名し、又は記名押印したものに限る。)

 被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む。)の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書

 被相続人の最後の住所を証する書面

 第一項第二号の相続人の戸籍の謄本、抄本又は記載事項証明書

 申出人が相続人の地位を相続により承継した者であるときは、これを証する書面

 申出書に記載されている申出人の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出人が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

 代理人によって第一項の申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面

 前項第一号の法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したときは、第二項の申出書には、その住所を証する書面を添付しなければならない。

(省略)

 登記官は、法定相続情報一覧図の写しを交付するときは、第三項第二号から第五号まで及び第四項に規定する書面を返却するものとする。

(省略)

不動産登記規則第247条