相続法改正について(配偶者居住権の創設など)
改正相続法が平成30年7月6日に成立し、同年7月13日に公布されました。今回の改正は相続法について約40年ぶりとなる大幅な改正となっています。
改正の概要は以下のとおりとなっています。
①自筆証書遺言の方式緩和に関する遺言制度の見直し
②遺産分割前の預貯金払戻しの制度をはじめとした遺産分割に関する見直し
③遺留分権利者の権利行使によって生ずる権利を金銭債権化する等の遺留分制度に関する改正
④相続による権利の承継についても対抗要件主義を適用する相続の効力に関する見直し
⑤遺言執行者の権限の明確化等の遺言執行者に関する改正
⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための特別の寄与の制度の創設
⑦配偶者の居住の権利を確保するための配偶者居住権の創設
⑧法務局における遺言書保管制度の創設をはじめとした遺言制度に関する見し
上記のうち、①から⑥については既に施行されていますが(但し、一部の改正については債権法改正と同じ令和2年4月1日から施行されるものもあります。)、⑦配偶者居住権の創設については令和2年4月1日以降に開始した相続について適用され、⑧の法務局における遺言書保管制度については令和2年7月10日から施行されます。
⑦配偶者居住権の創設によって、配偶者は「現在住んでいる家にそのまま住み続けたい」に加えて、「その後の生活資金も一定程度確保したい」という2つの希望をかなえることができるようになります。
現状の制度においては、配偶者が自宅の所有権を相続することによって住居に住み続けることはできますが、その分、遺産分割によって得られる預貯金等の財産が少なくなってしまうという問題があり、この問題を解消するため、所有権を相続するよりも低廉な価格で居住権を確保できるようになります。
⑧法務局における遺言書保管制度は、自筆証書遺言を確実に保管し、相続人が遺言の存在を把握できるようにして、紛失や隠匿、変造などのトラブルを未然に防止するため、法務局で自筆証書遺言を保管する制度です。
保管の対象となるのは、自筆証書遺言であって、封のされていないものに限られます。遺言書の保管が申請されると原本と画像情報を法務局で保管し、遺言者は保管されている遺言書について閲覧を請求することもできます。保管された遺言書について、遺言者の死亡後に相続人等の請求によって遺言書証明情報の交付や遺言書の閲覧があったときは、その他の相続人、受遺者及び遺言執行者に対して、遺言書を保管している旨の通知が法務局からなされます。また、現在、自筆証書遺言については家庭裁判所での検認手続きが必要ですが、法務局における遺言書保管制度により保管された遺言書については、検認を行う必要がありません。
ポイントのみ記載いたしましたが、相続や遺言に関しては時代の流れに沿った法整備が進んでいます。他方、相続に関する法律は複雑で判断が難しいケースもございます。詳しいご相談はお気軽に当事務所へお問い合わせくださいませ。