登記事項の一部が登記されていない!(遺漏による更正登記)
先日、ご依頼を頂いた特例有限会社の監査役の退任登記をする時、こんなことがありました。
書類を作成しようと登記事項証明書を見て気が付いたのですが、監査役の住所の記載がないんです。
取締役の住所はちゃんと記載されてるのに・・・。
本来の登記事項
ご存じの方も多いとは思いますが、特例有限会社では取締役と監査役については住所と氏名が、代表取締役(他に代表しない取締役がいる場合=平取締役がいる場合のみ登記できます)については氏名のみが登記事項となっています。
これが株式会社だと逆になり、取締役と監査役については氏名のみが、代表取締役(平取締役の有無に関わらず登記が必要)については住所と氏名が登記事項となっています。
手探りで原因を調べてみました
最初は、古いブック式の登記簿謄本を、現在の登記事項証明書のデータに移す際に起こったいわゆる「移記ミス」なのかと思い入念に調べてみましたが、そういった事実もなく、設立当初から監査役の住所がされていないことが判明しました。
次に、ひょっとしたら昔の改正前の法律では監査役の住所は登記事項ではなかったのかもしれないと考え、事務所にある古い「登記研究」などで有限会社法や商業登記法の改正について調べてみましたが、結局、どこにも住所不要の根拠は見つからずでした。
当時の原文をPDFで見れることを今回知ったのですが、昭和13年に作られた有限会社法の文書に「監査役アルトキハ其ノ氏名及住所」と書いてあり、住所の記載がないのは設立当初からの間違いだったんだと確信しました。
結局、一度法務局に事前相談をすることとし、なんとか登記することができました。
登記事項は全部記載されてるけど、記載された内容が当初から間違っていたという場面(「錯誤による更正」を要する場面)は何度か遭遇したことがありますが、登記事項の一部が当初からもれている(「遺漏による更正」を要する場面)のは、今まで見た記憶がなく初めてでしたので緊張しましたが無事に終えることができました。
無事に登記を終えて安堵しましたが、実務経験20年を経てもなお、初めてのケースに遭遇し、登記の世界は奥深いものだと改めて感じています。