租税特別措置法第84条の2の3第1項と第2項の適用について
これまで、土地の登記名義人である甲が亡くなり、相続人であるAとBがこの土地を共同相続したが、相続登記をしない間にAが亡くなってしまい、その後「亡A」と「B」の共有名義で「所有権の移転登記」をする場合、亡Aが相続した持分については租税特別措置法第84条の2の3第1項が適用され非課税になるが、この場合に、Bが相続した持分に係る土地の価格が100万円以下の場合に、租税特別措置法第84条の2の3第2項が適用され非課税となるのかについて議論がありました。
たとえば、土地の価格が180万円だったとして、その土地の登記名義人である(父)甲が亡くなり(母)Aと(子)Bが共同相続したものの、相続登記をしない間に(母)Aが亡くなってしまったような場合、亡A、Bそれぞれ持分2分の1ずつ相続したとして所有権移転の登記をすることとなります。
本来であれば、180万円に税率0.4%をかけた7,200円が登録免許税としてかかるのですが、相続登記の促進を目的としていくつか非課税となる扱いが取られています。
非課税となる扱いは2つあります
非課税となる扱い(その1)
非課税となるものの1つは「相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置」(租税特別措置法第84条の2の3第1項)で、個人が相続による所有権の移転登記を受ける前に死亡したときは、令和7年3月31日までの間に、その個人を所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さないというものです。
- 上記の例では、亡Aが相続した持分(2分の1)については、租税特別措置法第84条の2の3第1項が適用され非課税となります。
非課税となる扱い(その2)
非課税となるもののもう1つは「不動産の価格が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置」(租税特別措置法第84条の2の3第2項)で、土地について相続(相続人に対する遺贈も含む)による所有権の移転登記又は表題部所有者の相続人が所有権保存の登記を受ける場合において、不動産の価格が100万円以下の土地であるときは、令和7年3月31日までの間に受ける土地の相続による所有権移転又は所有権保存の登記については、登録免許税を課さないというものです。土地の所有権ではなく、土地の「持分」を相続により取得した場合、不動産の価格に持分の割合をかけて計算した額が100万円以下であればこの非課税の適用を受けることができます。
- 上記の例では、Bが相続した持分(2分の1)がこれにあたりますが、これまで、①土地全体の所有権移転の登記をしているということから180万円が基準となり非課税とならないという考え方、②亡Aの非課税部分を除いたBが相続した持分(90万円)が基準となり非課税となるという考え方があり、ちょっとした議論となっていました。
この議論に対する答えが「登記研究」に掲載されました
そして、今回の登記研究の質疑応答で、亡Aが相続した持分については租税特別措置法第84条の2の3第1項が適用され非課税になり、また、Bが相続した持分についても持分に係る土地の価格が100万円以下であるため、租税特別措置法第84条の2の3第2項が適用され非課税となるとの答えが示されました。
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登記研究901号(187ページ)質疑応答8006
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「相続登記をしないで死亡した相続人と、存命の相続人が共同して土地を相続したとして所有権の移転の登記をする場合には、死亡した相続人が相続した持分については租税特別措置法第84条の2の3第1項が適用されるが、この場合において、存命の相続人が相続した持分に係る不動産の価格が100万円以下であるときは、存命の相続人の持分については同条第2項が適用される。」
(相続に係る所有権の移転登記等の免税)
第八十四条の二の三 個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和七年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。
租税特別措置法
2 個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和七年三月三十一日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が百万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。